要点まとめ
- 「読む」・「聞く」ときは、言葉の意味通りに解釈しましょう。
- 「話す」・「書く」ときは、伝えたい意味通りの言葉を選びましょう。
- 言葉を正しい意味で使うために、多くの言葉を学びましょう。
はじめに
言葉によるコミュニケーションで最も基本的なことは、言葉の意味を正しく使うことです。
「読む」・「聞く」、つまり、相手の言葉を自分が受け取るときは、言葉の意味通りに受け取ることを心掛けましょう。
「話す」・「書く」、つまり、自分の言葉を相手に伝えるときは、伝えたい意味通りの言葉を選ぶことが重要です。
「今さら、そんな当たり前のこと」と思うかもしれませんが、言葉の意味を正しく使うことはコミュニケーションを成立させる上でとても基本的で重要なことです。
次の図を見てください。
言葉によるコミュニケーションが行われるとき、
(図中の①)送り手の脳内にある「脳内イメージ」が「言葉」に変換され
(図中の②)受け手の脳内で「言葉」が「脳内イメージ」に解釈されます。
両者の脳内イメージが一致したとき、コミュニケーションが成立します。
逆に、脳内イメージが異なる場合、コミュニケーションは失敗したことになります。
コミュニケーションの成立・失敗を図で示すと下のようになります。
このように、コミュニケーションを成立させるためには、図中の①②で、両者がそれぞれ正しく言葉⇔脳内イメージの変換ができている必要があります。
表で整理すると以下のようになります。
両者の言語変換がともに成功した場合のみコミュニケーションが成立します。
①の失敗、すなわち、話し手が脳内イメージを言語化することに失敗することは、【説明不足】です。
②の失敗、すなわち、受け手が言葉から脳内イメージを構築することに失敗することは、【思い込み】です。
コミュニケーションを成立させるためには、話し手・受け手の脳内イメージ⇔言葉の変換を正しく行うことが重要です。
【説明不足】を回避する:「話す・書く」語り手が正しく言語化する方法
まず、脳内イメージを言葉にする際に、頭の中で行われている言語化のプロセスについてみていきましょう。
話し手が自分の脳内イメージを言語化する方法には大きく3つのパターンがあります
最もシンプルなパターンは、脳内イメージを直接言葉にするパターンです。
話し手の頭の中を図解した次の図を見てください。
これは、あいさつや返事をするときのように、言葉の言い回しを深く考えたりせず、定型的なフレーズを素早く言語化するパターンです。
思ったことをそのまま言語化するパターンのため、主語や述語が省略されたりしますが、その分テンポよく言葉が出てきます。
2番目のパターンは、主語や述語のある文章になるように言語化するパターンです。
パターン2では、脳内イメージを言葉に変換する際に、「誰が」「いつ」「どこで」「何を」「どうした」などを盛り込み、日本語として正しい文章にするステップがあります。
雑談やチャットアプリなどでの他愛ないやり取りで、リラックスしながらスムーズなコミュニケーションをするのに適しています。
反対に、日程調整や作業手順を教えるときなど、正確な情報伝達が求められる状況では、パターン2は誤解を生じる可能性が高いため、適しません。
3番目のパターンは、相手に誤解を与えず、自分の脳内イメージを正確に伝えたいときのパターンです。
パターン3の特徴は、(4)で、自分の脳内に仮想的に受け手をイメージし、(5)で、受け手が誤解しないように必要な情報をすべて付け足している点です。
(4)で、仮想的な受け手がどのように受け取るかを想定するには、言葉の意味を忠実に解釈しなければいけませんが、これには慣れが必要です。
意識的に訓練していないと、人は雰囲気で言葉を解釈してしまうからです。
いつも言葉の意味を忠実に理解することを心掛けることで、仮想的な受け手を想定できるようになります。
上図では道案内の例を挙げていますが、予定調整や何かを教えるとき、誤解を解くときや説明するときなど、様々なシーンでパターン3のようなコミュニエーションが必要になります。
また、社会人になると、業務上のすべてのコミュニケーションで正確性を求められます。
「話す・書く」とき、語り手のイメージを誤解なく正しく言語化する必要がある場合は、次のことに注意して言葉を選びましょう。
・脳内イメージを説明するのに必要な情報をすべて言葉にする
・自分の言葉から別の脳内イメージが作れないことを確認する
【説明不足】を回避する:ケーススタディ「次の休日、一緒に遊ぼう」と誘われたときの答え方
ここまでで、脳内イメージを言語化するパターンを整理することができました。
次に、具体的なケーススタディを通して、パターン3の正確な意思疎通の仕方を学びましょう。
さて、仲の良い友人から、「次の休日、一緒に遊ぼう」と誘われて承諾するとき、あなたなら何と言いますか?
その日あなたは、午前中は予定があるから遊べないが、夕方は予定がなく遊べるものとします。
パターン1、2、3のそれぞれ、回答例を見てみましょう。
パターン1では、午前中ダメであることも夕方OKであることも伝えられていません。
これでは、相手は一日中遊べるものと勘違いしてしまいますね。
このパターンの問題点は、必要な情報を相手に伝えきれていないことです。
繰り返しになりますが、脳内イメージを説明するのに必要な情報をすべて言葉にすることが大事です。
次にパターン2の回答例です。
一見すると、自分の脳内イメージをしっかりと言葉にできているように見えます。
しかし相手からすると、夕方とは何時なのかが曖昧なため、いったいいつ集合すればいいのか分かりません。
また、午前と夕方以外、つまり、午後の早い時間や夜は遊べないのか?という疑問も沸いてしまいます。
このように、単に脳内イメージを素直に言語化するだけでは、曖昧な表現になってしまい、相手に真意を伝えられません。
この問題を避けるには、自分の言葉から別の脳内イメージが作れないことを確認することが大事です。
最後に、パターン3の回答例です。
このパターンでは、(3)で考えたセリフを相手が受け取ったとき、不明点がないかあらかじめ考えています。
すると、曖昧な表現があることに気付くため、誤解のないように補足説明を追加して話すことができています。
説明やビジネス文書では、パターン3のように明確に意味が伝わるようにしましょう。
【思い込み】を回避する:「読む・聞く」受け手が正しく解釈する方法
ここから先は、語り手が正しく言語化することができている前提で話をしていきます。
なぜなら、語り手が言語化に失敗してしまっていた場合、受け手がどれだけ頑張ってもコミュニケーションが成立することはないからです。
【思い込み】とは、相手の言葉を受け手が解釈する際に、元の言葉の意味とは異なる意味で解釈してしまうために発生する問題です。
つまり、元の言葉通りの意味で解釈すれば【思い込み】は発生しません。
どうすれば言葉通りの意味で解釈できるのか:元の言葉通りに解釈するのを妨げる3つの罠
【思い込み】の原因は、実は3つしかありません。
- 語り手の発した言葉を受け取らない【見落とし・聞き漏らし】
- 語り手が発していない言葉を勝手に受け取る【自意識過剰・妄想】
- 語り手の発した言葉を理解できない【語彙不足】
次の図を見てください。
左下のように、語り手の発した言葉を過不足なく受け取ることが、言葉によるコミュニケーションを行う上でのスタートラインです。
語り手に「A君ってかっこいいよね」と言われたとき、「A君=かっこいい」という意味以外のことを解釈するのは誤りです。
まずは、語り手の発した言葉を100%受け取り、発していない言葉は受け取らないことを心掛けましょう。
A君の話をしているときに、自分のことが嫌いかどうかは関係ありませんし、語り手がA君に対して恋愛感情を持っているかどうかも関係ありません。
言葉の意味それ自体と、受け取った言葉から連想した妄想を区別できるようになりましょう。
言葉の意味を解釈するには、言葉の意味を正しく把握している必要があります。
言葉の意味を間違えるパターンとしては、
- そもそもその言葉を知らない
- その言葉の意味を間違って覚えてしまっている
の2パターンがあります。
言葉を知らない場合は、相手にどういう意味か聞くか、辞書やインターネットで調べるのが良いでしょう。
言葉の意味を間違って覚えてしまっている場合は、自分で気付くことが難しいです。
日常的に、言葉の正しい意味を調べる習慣をつけましょう。
今は、昔に比べて検索システムが発達していますので、すぐに調べることができます。
言葉の意味があっているか少しでも不安に思ったときは、手間を惜しまず調べる習慣をつけることで、正しい言葉が身に付きます。
ぜひ、たくさんの言葉の正しい意味を身に付けてください。
まとめ
言葉によるコミュニケーションでは、明確な意味で言葉を選ぶこと、言葉の意味を正しく読み取ることが重要です。
知らない言葉が多いと、そもそも相手の言葉を理解することができないため、コミュニケーションが成立しません。
正しい言葉をたくさん学び、確かなコミュニケーション力を育んでください。