要点まとめ
- あらゆる組織やグループには組織の力学が働いています
- 組織の力学とは、「より力のある者の意見や言い分が通る」という法則のことです
- 組織の力学を学ぶことで、下記の力を育んでいきましょう
- 組織の中で上手に振る舞う力
- 組織内の人と良好な人間関係を構築する力
- 組織内の人と協力して物事を進めていく力
はじめに
2人以上の人の集まりのことを、グループや組織などと言います。
世の中にはたくさんのグループがあり、誰もが多くのグループに所属しています。
会社や学校も1つのグループですし、大きなものでは国家もグループといえます。逆に小さなグループとしては、家族や仲の良い友達同士などが挙げられます。
それぞれのグループがどんなグループなのかは、グループの構成員や目的、そして日々の行動の積み重ねによって形成されます。
たとえば、会社というグループは、お金を稼ぐために集まった人々が日々仕事をこなしていくことで成立しているグループです。
一方、家族というグループは、夫婦や血縁関係の人々が日常生活をスムーズに行ったり子どもを育てたりするためのグループです。
また、仲の良い友達同士というグループであれば、一緒に遊んだり楽しい時間を過ごすことが目的で、たまにケンカしたりもしますが、そのうち仲直りしてまた遊んだりします。
このように世の中には多種多様なグループが存在します。
自分が所属する各グループの特徴をそれぞれ個別に理解して適切に振る舞うのはとても大変です。
ですが実は、ありとあらゆるグループには組織の力学という共通の法則がはたらいて成立しています。
つまり、それぞれのグループが互いに全く異なるように見えるのは、組織内での力の働き方が異なるからそう見えているだけなのです。
ですので、組織の力学を学ぶことは、自分の所属するグループがどういう理屈で動いているかを理解する上でとても重要です。
組織の力学を学ぶことで、グループ内に働く力の理屈を理解し、グループの中で上手に振る舞う方法を身に付けましょう。
そして、グループのメンバーと良好な人間関係を構築する力や、周囲の人々と協力して物事を進める力を伸ばしていきましょう。
組織の力学とは
組織の力学とは、腕相撲のように、「力の強いものの言い分が通る」という法則です。
自然界では、物体に力が作用するとその力の向きに物体が動きます。
これと同じように、組織の中では、有力者の思惑を実現する方向に組織全体が動きます。
組織の中に働く力は、単なる腕力のことではなく、「権力」と「実力」という2つの力を意味します。
まず、それぞれの力がどういうものか簡単に説明したいと思います。
権力とは、相手を強制的に行動させる力のことです。
たとえば、会社では社長や部長などの役職者が権力を持ちます。
学生であれば、運動部の上下関係(先輩の言うことは絶対)などが権力の例として分かりやすいでしょう。
暴力や罰則も、相手を強制的に動かすための力という意味で権力に含まれます。
大人の世界では、暴力を振るうと逮捕されたり懲戒処分を受けたりするため普通は使われませんが、子どもや学生の場合は、暴力的な人に権力が発生することがあります。(言うまでもなく、子供であろうと暴力は許されませんが、現実には日常的に暴力を振るう子どもや学生が身近にいるケースはよくあります。)
一方、実力とは、相手を説き伏せたり説得したりして自発的に動かす力のことです。
たとえば、合理的な説明で説得する力や、人望や実績がある人の意見、単純に能力が高いことなどが実力です。
具体的には、社内会議などで誰も思いつかなかった解決策を発案するのは実力です。
ほかにも、学級委員を決める時などの投票で選ばれるためには人気や人望という実力が必要ですし、運動会のリレー代表に選ばれるためには足の速さという実力が必要です。
このように、組織の中で働く力には権力と実力の2つがあります。
そして、これらの力が複雑に作用しあった結果が、グループ内で行われる具体的な活動として表れてきます。
なお、子どもや学生同士の仲良しグループには、グループ内に力関係など感じないことがあります。それは、単にグループの中に権力者も実力者もいない特殊な状況であるためであって、組織の力学が破綻しているわけではありません。
誰でも、大人になっていくにつれ、少しずつ力関係のあるグループに参加するようになっていきます。
その時には、グループの中で組織の力学という法則が働いていることを思い出してください。
組織におけるポジションを、権力と実力の有無によって分類する
権力の有無×実力の有無を軸にパターン分けすることで、組織やグループにおけるポジションを以下の4つに分類することができます。
- 権力と実力を兼ね備える組織のボス
- 権力はあるが、実力はない腰巾着
- 権力はないが、実力はある実務リーダー
- 権力も実力もない一般メンバー
これらのポジションは非常に流動的で、グループや相手、行動の目的が変わると変化します。
たとえば、会社員の父親は、会社での仕事中は組織のボスですが、家で家事をするときは一般メンバーになったりします。
また、会社などのピラミッド型の組織では、中間管理職は部下に対しては組織のボスですが、上司に対しては実務リーダーになるということもあります。
あるいは、仲間内で遊ぶ際に、旅行計画を立てるときはAさんが実務リーダーになるが、バーベキューをするときはBさんが実務リーダーになるということもあります。
子どもや学生の友達同士の仲良しグループの場合、全員が一般メンバーでグループ内に力関係がないように見えることもあります。
このように、グループ内の力関係に着目することで、各人のポジションを分析することができます。
このポジションに従って行動すると、グループ内でのどんな物事も非常にスムーズに進みます。
逆に、ポジションを無視した行動は大きなトラブルの元となります。
たとえば、実力のない一般メンバーが、組織のボスや実務リーダーの意見に真っ向から対立するとヒンシュクを買ってしまいます。「実力もないのに何を言っているんだ」となるわけです。
逆に、組織のボスが部下に何も指示をせず放置していても、グループとしての成果を得ることはできません。次第に、「こんなボスに従っていても意味がない」と誰もが思うようになり、グループ自体が崩壊してしまいます。
組織の力学=力があるものの言い分が通るという法則は、力のないものが好き勝手に動いても徒労に終わるため、初めから有力者の言う通りに動くのが効率的という意味でもあります。
自分のポジションを獲得する方法
グループの中でのポジションは、周囲からの評価で決まります。
自分で自分を組織のボスだと宣言しても、周囲がそう思わなければ組織のボスとして振る舞うことはできません。
しかしながら、最初に自分が組織のボスになりたいと思わなければ、そのポジションを得ることはできません。
つまり、グループ内で特定のポジションを得るためには、
- 自分自身がどのポジションになりたいかを決める
- 周囲の人々に自分こそがそのポジションにふさわしいと認めさせる
という手順を踏むことになります。
具体的に自分のポジションを獲得する方法を説明します。
1.自分自身がどのポジションになりたいか決める方法
これについては、自分自身で自分の好きなポジションを選ぶだけです。
ただし、2つ注意点があります。
1点目は、なりたいポジションによって、周囲に認められるための難易度が異なる点です。
つまり、一般メンバーとして認められるのは簡単ですが、組織のボスとして認められるのは大変だということです。
組織のボスになりたいけれど、周囲に自分を認めさせる努力はしたくない、というのは通用しません。
もし、組織のボスになると決めるのであれば、それに見合う努力をするという覚悟も持ってください。
2点目は、自分の本音で自分のなりたいポジションを決めなくてはならないという点です。
自分のポジションを決める際に、見栄を張ったり、他人に言われて仕方なく決めたりしてはいけません。
自分は目立つのが苦手だから一般メンバーになりたい、と思うのであれば、それが一番良いです。
もし、親や知人などから、組織のボスになれ、とか、実務リーダーになれ、と言われても、自分自身が望まないポジションになろうとする必要は全くありません。
繰り返しになりますが、自分自身のなりたいポジションを決める方法は、自分で自分はこうだと決めるだけです。
2. 周囲の人々に自分こそがそのポジションにふさわしいと認めさせる方法
こちらについては、状況によって様々なやり方がありますが、実は1つのシンプルな方法があります。
それは、相手の価値観に沿った利益を提供し続けることです。
分かりやすく言うなら、相手が喜ぶことをするということです。
もし組織のボスになりたければ、グループ内の誰もが大喜びすることをし続ければいいということです。
一般メンバーになりたいのであれば、グループ内の誰かを少し喜ばせるくらいで大丈夫です。
小学生くらいの子どもであれば、価値観といっても「楽しく遊ぶこと」のような単純なものですので、一緒に楽しく遊べるだけで認められます。
中学・高校と大きくなるにつれ、価値観も少しずつ多様化・複雑化していきます。
「面白い冗談を言いながらで笑いあえること」が価値観の人に認められるには、最新の芸人のネタを仕入れたり、身近な出来事を面白おかしく話すことで認められます。
「オシャレに輝いていること」が価値観の人に認められるには、流行のファッションや話題のモノ・場所に詳しかったり、カリスマ的なセンスを発揮することで認められます。
「単純に気が合う」という価値観もあります。相手と同じ意見を言い続けて、こいつは気が合うと思われれば、それだけで認められることもあります。
大人になっても、相手の価値観に沿った利益を提供して、相手を喜ばせれば認められるという法則は不変です。
「仕事で成果を出して会社の利益に貢献したい」という価値観の人に認められるには、優れたアイデアや技術を示して実際に利益をあげることで認められます。
「贅沢な暮らしをして、一生遊んで暮らしたい」という価値観の人に認められるには、高価なプレゼントを贈ったり、大金を貢いだりすることで認められます。
このように、周囲の人に認められるには、その人たちが喜ぶこと/利益になることを提供すれば良いということです。
とはいえ、かならずしも直接的な利益を提供する必要はありません。
人脈や経験など、間接的に相手の利益につながるものを自分が持っていると相手に思わせられさえすれば、相手に認められることはできます。
そして実は、人脈や経験などの間接的に相手の利益につながるものを本当は持っていなかったとしても、相手が自分のことを何かしらの利益につながると思い込みさえすれば、相手に認められることが可能です。
たとえば、運動部の勧誘をしている上級生が、体格はいいが未経験の新入生に入部を勧めることはよくあります。
また、たまたま繁華街で有名人とすれ違った翌日は、ミーハーな友人たちに囲まれて根掘り葉掘りその時の様子を質問されるでしょう。
このように、人は、素質や運など本当にあるかないか分からないものであっても、あたかもその人の実力であるかのようにみなして判断する傾向があります。
つまり、グループ内でのポジションを得るには、自分の実力をよく知ることと、周囲から自分がどのように見られているかを把握することが非常に重要です。
自分の実際の実力と相手の価値観を擦り合わせ、直接的・間接的にどんな利益を提供できるかを考えてみましょう。
時には、相手に自分を過大評価させるような状況を意図的に作り出せないか考えてみましょう。
グループ内で認められる方法はケースバイケースで様々ですが、シンプルな法則があることを理解し、色々な状況で法則を使いこなす力を身に付けましょう。
そうすれば、どんなグループに入っても上手に振る舞うことができるようになります。
まとめ
グループの行動や意思決定を司る法則は、有力者の言い分が必ず通るというものでした。
自分がグループ内でどういったポジションになりたいかは自分で決めますが、実際にそのポジションとして振る舞うには周囲に認められる必要があります。
周囲の人々の価値観に沿った利益を提供することで認められれば、グループ内で望むポジションを得られ、ポジションに応じた力を発揮することができます。
ぜひ、グループや組織の中にはたらく法則を理解し、使いこなせるようになってください。